親やご家族がなくたった場合は税金関係の手続きが必要になります。また相続関係の諸手続きの段取りもご説明させていただきます。
税金関係は申告期限に遅れると延滞税や無申告加算税などのペナルティによって税負担が大きくなってしまう可能性があるので、可能な限り早く準備を始めておきましょう。
①親や家族が亡くなった後の税金関係の諸手続き
1,所得税の準確定申告、納税(4ヵ月以内)
亡くなった方が事業者だった場合など確定申告をすべきだった場合、相続人が代わって確定申告をしなければなりません。
これが必要になるのは、主にご家族が個人事業主だった場合や年収2,000万円を超える給料取得者だった場合などです。
【提出先】
故人の住所地を管轄する税務署
2,固定資産税の納税
年の途中で家や建物などの所有者が亡くなられた場合はその年度の納税義務は相続人に引き継がれます。
【支払い先】
固定資産のある市町村
3,相続税の申告、納税(10ヵ月以内)
遺産総額が相続税の「基礎控除」を超える場合には、相続税の申告と納税をしなければなりません。基礎控除は「3000万円+法定相続人数×600万円」です。例えば、ある人が亡くなって、妻と子2人が残された場合、法定相続人は3人で基礎控除額は4,800万円という計算です。つまり、遺産総額が4,800万円以下だったら、相続税は一切かからず申告も不要です。
一方、遺産総額が1億円だった場合には、「1億円ー4,800万円=5,200万円」となり、基礎控除を超える5200万円に相続税がかかります。ただし、上記以外にも相続税は複雑な事が多いので相続に強い税理士に相談してすると良いでしょう。
②親や家族が亡くなった後の相続関係の諸手続き
1,相続人調査
家族が亡くなったら、すぐに相続人調査を開始しましょう。具体的には被相続人(亡くなった方)の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本類を集めます。戸籍謄本類は、本籍地の役所に申請して発行してもらいます。
【申請先】
本籍地のある役所
【必要書類】
「申請書
」
「除籍謄本
」
「申請者の身分証明書」
2,相続財産調査
被相続人(亡くなった人)の相続財産調査も行う必要があります。つまり、どのような遺産があるのかを明らかにします。
自宅内で通帳などの資料を探したり、金融機関に問合せをして「残高証明書」を発行してもらったり、取引のあった証券会社に問合せをしたり、法務局から不動産の全部事項証明書を取得したりして調べていきましょう。
3,遺言書を探す
遺言書が残されていないか確認しましょう。自宅の机や棚、タンス、引き出しなどに保管されているケースが多いです。貸金庫に保管されているケースもあるので、死亡したら早めに相続人が集まって貸金庫の中身を確認しに行きましょう。
公正証書遺言の場合、公証役場に行けば遺言書を検索してもらえるので、一度確認しておくべきです。
遺言書があれば基本的に、遺言書通りに遺産を分けることになります。
4,遺言書の検認
遺言書が見つかったら、すぐに家庭裁判所で遺言書の「検認」を受けましょう。
検認せずに開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります。
【検認する場所】
被相続人の居住地の家庭裁判所
【必要書類】
「遺言書
」
「遺言者の出生時から亡くなるまでのすべての戸籍謄本類
」
「相続人全員の戸籍謄本(状況によって、他の戸籍謄本類が必要になる場合も)」
「費用(収入印紙800円と郵便切手代)」
5,相続放棄、限定承認の検討と手続き(3カ月以内)
亡くなった人に多額の負債があった場合などには、相続放棄や限定承認を検討しましょう。相続放棄すると、一切の資産や負債を相続しません。限定承認の場合、資産超過であればプラスになった部分だけを承継できますが、相続人全員で手続きしなければならないなどデメリットがあります。
【申請先】
被相続人の住所地の家庭裁判所
【必要書類(相続放棄の場合)】
「相続放棄申述書
」
「被相続人の除籍謄本
」
「被相続人の住民票除票
」
「申述人の戸籍謄本
」
など
相続放棄の必要書類は、被相続人と、放棄する人との続柄によって異なります。
6,遺産分割
遺言書がない場合、相続人が全員集まって遺産分割協議を行い、遺産の分け方を決める必要があります。
遺産分割協議が終わった後は、遺産分割協議書の作成が必要です。
話し合いで解決できないなら、家庭裁判所で遺産分割調停をして遺産の分け方を決めなければなりません。調停でも合意できない場合には「遺産分割審判」となり家庭裁判所が遺産分割の方法を決定します。
普段から家族仲が不仲だった場合、相続争いに発展する恐れがあります。遺産分割でもめそう、もしくはすでにもめている場合、弁護士に相談して下さい。交渉の代理をしてくれます。
7,相続税の計算、申告、納付
遺産の分け方が決まった後は、相続税を計算する必要があります。①親や家族がなくなったら後の税金関係諸手続きの
3,相続税の申告、納税でご説明したとおり10カ月以内に相続税を納めなければなりません。
相続税額は、相続税の対象となる不動産の評価額や金融資産などを正確に把握した上で、厳格なルールに従って計算しなければなりません。相続税を抑えるための特例の適用の検討も必要です。計算ミスなどがあると、税務調査で指摘されて追徴課税を受ける恐れもあります。少しでも不安な方は、相続に強い税理士に相談しましょう。
8,相続登記(不動産の名義変更)
遺産分割協議や調停・審判によって遺産分割の方法が決まったら、財産の名義変更などの相続手続きを行います。遺産に不動産があれば速やかに名義変更しましょう。なお、相続登記に期限はありませんでしたが、2024年4月から相続登記が義務化されます。基本的に相続から3年以内に相続登記しないと、10万円以下の過料が科せられる可能性があります。
【申請先】
不動産の管轄の法務局
【必要書類】
「被相続人の除籍謄本
」
「被相続人の住民票除票
」
「相続人の住民票
」
「相続人の戸籍謄本
」
「遺産分割協議書または遺言書
」
「固定資産評価証明書
」
「相続関係説明図
」
など
不動産の名義変更および各種名義変更手続きは司法書士が得意としていますので、代行を依頼してもよいでしょう。
9,銀行の預貯金払い戻し、名義変更
遺産に預貯金が含まれていた場合、銀行などの金融機関に連絡し、速やかに払い戻しまたは名義変更を行いましょう。なお連絡と同時に、銀行口座は凍結され、名義変更が終了するまで預金の引き出しができなくなります。
【申請先】
取引先の金融機関
【必要書類】
「名義変更や払い戻しの申請書
」
「被相続人の預貯金通帳、銀行印、キャッシュカード
」
「被相続人の除籍謄本
」
「相続人の戸籍謄本
」
「遺産分割協議書または遺言書
」
など
詳細は金融機関に確認して下さい。
10,株式の名義変更
被相続人が株式取引をしていた場合、その名義変更も必要です。
【申請先】
保有していた
証券会社
【必要書類】
「被相続人の除籍謄本
」
「相続人の戸籍謄本
」
「証券会社への届出印
」
「相続人の証券口座が分かる資料
」
「遺産分割協議書または遺言書
」
など
詳細は申請先の証券会社に確認して下さい。
11,自動車の売却、名義変更、処分(廃車)
遺産に自動車が含まれていたら、名義変更または売却、廃車の処分を行います。
【名義変更の申請先】
普通自動車:運輸支局
軽自動車:軽自動車検査協会
【必要書類】
「被相続人の除籍謄本
」
「相続人の印鑑登録証明書
」
「遺産分割協議書または遺言書
」
「車検証
」
「自動車税申告書
」
「車庫証明書(車の保管場所が変わる場合)
など
なお、軽自動車の場合には軽自動車検査協会へ名義変更などの申請をします。